苦しくて、愛おしくて
こういう小さいことに心臓がくすぐられるような感覚を抱き始めたのは、割りと出会ってすぐだった。
その感覚が世間一般的には〝恋〟とやらの分類に入ることも、知っている。
「りーん。お家帰って寝たら? DVDはまた今度にしてさあ」
頬を撫でられるような感触にハッとすると
慌てて傾きかけていた態勢を起こし直す。
「…や、観る」
瞼を擦ると、ドライヤーをコンセントに挿しながら振り返る奈央。
「でも眠いでしょう?」
「眠くない」
「……」
下手な嘘を吐いていると
「熱っ」
ドライヤーの温風が顔にブワッとかかる。