愛は尊い
リビングでは行ったり来たりと
落ち着かない様子のお父さん
私を見るなりドタドタドタと近寄り
両肩をガシッと掴んできた
『な、なに?どうしたの?』
朝からどうしたのかわからない
驚いて、おはようすら言えていない
「音、よく聞いてくれ。今から母さんのところへ行くんだ」
母さん、
お父さんのお母さん
私から見たらお婆ちゃんだ
『何言ってるの?いまいち大事なのに、お婆ちゃんの所へ行けないわよ』
「いいから!いいか!?本田音と名乗ってはダメだ、誰に聞かれてもだ」
何を言っているのか
さっぱりわからない
何故名前を名乗ったらダメなのか…
何も答えられず
お父さんに連れられ玄関まで来た
行きなさい、と突然言われ
パニックになりながら靴を履いた
玄関のドアノブを手にしたが
どうにも納得が出来ず振り返る