愛は尊い


久しぶりに乗ったバス
乗り慣れていたはずなのに
変に緊張がある

流れる景色が
いつの間にか見慣れたものになる


電車を乗り継いだ方が早いのだが
その乗り換えが心配だと言い
バス1本で行ける路線を調べてくれた
意外と心配性な勝田さん


バスを降り、少し歩けば我が家だ
たった3ヶ月…何も変わらない
家の前に着けば、今にも吐きそうなくらい心臓がばくばく鳴っている


私の中では、解決していないことがある
携帯の解約だ
インターホンを押すか、迷っていたら
おかえり、という言葉が飛んできた


『…お父さん、』


今日は平日の午前中
なのにお父さんは、ポロシャツにスラックスと、休日を思わせる姿だ


『…仕事は?』


「ん?行ったんだが、音が帰ってくるからって皆んなが帰れってな…」


ははっ、と笑いながら
お父さんは玄関のドアを開けた


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