愛は尊い
「私は…愛されてるから、幸せ。音ちゃんも、そういう相手に出会えたら、幸せになれると思うわ」
その言葉が気に入らない
煙草を吸おうと
ポケットの中に手を入れ
煙草を取り出す
「ここはやめて」
このバルコニーは
楓のお気に入りの場所
それを荒らされたくないわけだ
ちっ、と
舌打ちをし、煙草を戻した
「お前はどうなんだ」
手の中にはジッポ
カチカチ、とふたを開けては閉め
手持ち無沙汰には丁度いい
「私?」
「ああ、お前の気持ちだよ。オヤジがお前を大切にしてるのは知ってる。だが、お前は?オヤジが好きか?」
俺は何を言ってるんだ
そう思いながらも
そう発してしまっていた
当たり前だが
楓は驚いた顔をしている
長い付き合い、今まで一度も
そんな話はしたことがない