愛は尊い
あっ、という楓の声とともに
ポチャン、という音が聞こえた
「私があげたジッポっ」
忘れてなかったのかよ、
「オヤジを待たせんなっ」
それだけ言ってバルコニーを出た
とうぶん…ここには来ないだろう
あー見えて
オヤジは真面目だ
いつでも籍を入れようと思えば
入れれるものを
楓の気持ちを考えている
もしかしたら
俺の気持ちも考えてくれていたのかもしれないな
これで少しは前に…進めるかな
踏ん切りつけれたのは
もしかしたら、あいつ…
音のおかげかも、しれないな
「黒崎さん」と俺を呼ぶ
あいつの真っ直ぐな目、
こんな出会いじゃなかったら…と
一瞬でも思った自分に笑えた
【FIN】