愛は尊い
椅子から下り
飲み終えたグラスと皿を返却口へと持っていくため、トレイを持つ
…が、何故か腕を掴まれてしまった
その腕を追うと、隣に座っていた
スーツ姿にオールバック
ブラウンのサングラスの中には
一重で切れ長の瞳が見えた
『あの、』
「本田音ちゃんだね」
被せるように私の名前を言ってきた
その瞬間、ザワザワと鳥肌が立ち
危険音が私の中で鳴り響く
『ち、違います!』
手を払い行こうとすれば
目の前に紙のようなものが目に入った
男が持っていたもの
それは破ったのであろうきれっぱしの
私の写真だ
『卒業アルバムっ!』
つい反応してしまったが終わり
男はニヤッと笑みを浮かべ
「本田音ちゃんだね。これ、君の部屋にあったら、ちょっと借りちゃった」
昨日、貰ったばかりの卒業アルバム
まだ全部見ていないのに
どうして…と涙が浮かんでくる