愛は尊い


椅子から下り
飲み終えたグラスと皿を返却口へと持っていくため、トレイを持つ


…が、何故か腕を掴まれてしまった
その腕を追うと、隣に座っていた
スーツ姿にオールバック
ブラウンのサングラスの中には
一重で切れ長の瞳が見えた



『あの、』


「本田音ちゃんだね」


被せるように私の名前を言ってきた
その瞬間、ザワザワと鳥肌が立ち
危険音が私の中で鳴り響く


『ち、違います!』


手を払い行こうとすれば
目の前に紙のようなものが目に入った

男が持っていたもの
それは破ったのであろうきれっぱしの
私の写真だ



『卒業アルバムっ!』


つい反応してしまったが終わり
男はニヤッと笑みを浮かべ



「本田音ちゃんだね。これ、君の部屋にあったら、ちょっと借りちゃった」


昨日、貰ったばかりの卒業アルバム
まだ全部見ていないのに
どうして…と涙が浮かんでくる


< 20 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop