愛は尊い



「私ね、あの人に買われたのよ」



その言葉に振り返る
まさかと楓さんの顔を見れば
ニッコリ笑いかけられた


「うちね、自営業だったの。古い工場で従業員も3人しかいない小さな工場。車の小さな部品を作っていたんだけど、不況の波には勝てなくて…ね。銀行からも借りれなくなって、困った挙句…借りたのが闇金だったの」


話している楓さんの顔が暗くなり
自分と多少重なるところがあり
楓さんの話を聞いていた


「娘が一人いる、それを嗅ぎつけた闇金連中は私に狙いをつけたの。返すあてがなかったから…私を差し出したのよ」


差し出した…ってことは
親に売られたってこと?
ひと昔の話じゃなかったのかと思うような話だ


「連れて行かれたのは…風俗。それも本番ありのね」


その時、楓さんは16歳だと言っていた
私と2つしか変わらない


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