愛は尊い
ポーンと音がなり
エレベーターの扉は開いた
エレベーターを降りると
すぐ立ち止まり
私の方へと振り向いた
「いいか?」
何がいいのか、わからず
返事に困っていたら
私の頬をムニッとつかんだ
『ひっ、ひやいれす(痛いです)』
笑っとけ、と言い
黒崎さんは前を向き歩き出した
新たに開かれた扉
私は黒崎さんのあとに続くだけ
「失礼します」
いつもと違う黒崎さんの声に
何かが違うのだと悟る
笑っとけ、と言った黒崎さん
それは愛想振り撒けということなのか
それでも、言われた通りにしたほうがいい
「どうぞ」
聞きなれない声に身体が反応する
部屋の中にいたのは
スーツを着た30後半から40前半の男性
キリッとした眉に薄い唇
少し顔が疲れているようにも見える