愛は尊い
わかってしまった…
この人、嘉賀様は…
私を買ってくれる人だ
「…で、期限は?」
「嘉賀様のご希望に応じます」
黒崎さんの言葉に
嘉賀様は腕時計を確認した
スーツもだが、
腕時計も高そうだ
そういう物に疎い私だが
私を買う…借金を払ってくれるくらい
お金持ちなんだ
「明日の夕方」
「わかりました。では明日、またこちらへお伺いします…では、」
一礼をした黒崎さんは振り返り
入ってきたドアへと向かう
私も慌てて追いかけようとした
「小娘、お前は残れ」
嘉賀様の言葉に振り返る
小娘、というのは私のことだ
あれだけ嫌そうに見ていた私に残れ?
黒崎さんを見れば
あとで迎えに来る、と
さっさと出て行ってしまった
あーっ、と私が言葉を発する前に
バタンと閉じられたドア