愛は尊い
シャワーを浴び終えた私は
さっきまで着ていたワンピースドレスを身につける
だが、装飾品を付ける気にはなれなく
髪の毛もそのまま
ドアを開けると
誰もいないと思っていた
「よう」
ソファに足を組んで座っていたのは
迎えに来ると言っていた黒崎さん
黒崎さんはあの時
私に何が起きるか
知っていたのかもしれない
…知っていたからといって
黒崎さんを責めることなんて出来ない
『今日は、もう帰れますか?』
「あぁ、そうだな。家に帰るか?」
帰れるんだ、とホッとしたが
私はどこに帰れるのだろうかと
迷走してしまう
嘉賀様と、契約を結んだ
なら、私が帰るところは
あの家じゃないんじゃないか…
そう思っていたら
ワシャワシャと私の頭を撫でてきた
「まず出よう」
話はそれからだ、と
黒崎さんは部屋を出ようと
背中に手を当て誘導してくれた