愛は尊い
初めて見るお父さんの姿
お母さんは泣き崩れ
私の足元を抱きしめている
『…やめてよ…ほんと…に、』
18年、大切に育ててくれた両親に
こんな形でサヨナラを告げるのかと思うと心が痛い
『たまに…帰ってくるから。だから…』
娘に土下座なんて、やめてよ…
額を床につけているお父さん
床が濡れている
その時、
インターホンが鳴った
迎えに来たのだと理解した
『お母さん…』
お母さんの手を取り
同じ目線へと座り込み抱きしめた
今までありがとう、と…
お母さんを離し、土下座をしているお父さんに抱きついた
お父さんは何も言わず
ただ、黙って涙を流していた
『…行ってきます』
それだけ言ってキャリーケースを手に
リビングを出た
音っ、という叫び声が聞こえたが
もう振り返ってはダメだ