愛は尊い


初めて見るお父さんの姿
お母さんは泣き崩れ
私の足元を抱きしめている




『…やめてよ…ほんと…に、』



18年、大切に育ててくれた両親に
こんな形でサヨナラを告げるのかと思うと心が痛い



『たまに…帰ってくるから。だから…』



娘に土下座なんて、やめてよ…
額を床につけているお父さん
床が濡れている


その時、
インターホンが鳴った
迎えに来たのだと理解した



『お母さん…』



お母さんの手を取り
同じ目線へと座り込み抱きしめた
今までありがとう、と…


お母さんを離し、土下座をしているお父さんに抱きついた
お父さんは何も言わず
ただ、黙って涙を流していた



『…行ってきます』



それだけ言ってキャリーケースを手に
リビングを出た
音っ、という叫び声が聞こえたが
もう振り返ってはダメだ


< 52 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop