愛は尊い



「ーーい、聞いてんのか?」



ふと、機嫌悪そうな声が聞こえた
あー、ごめん、と
現実に引き戻された


「嘉賀様は忙しい方だ。今日は婚姻届を出したら、新居に連れて行く。新居って言っても、今まで暮らしていたマンションだ。家政婦がいるはずだから、そいつにいろいろ聞け。俺の仕事らマンションに送り届ける、までだ」


わかりました、と返事をするが
あまり頭には入ってない


そんな私を見かねたのか
ほら、と私の目の前に
折られた1枚の紙を出してきた



何も言わず受け取り
紙を開くと、可愛らしい文字が見えた



【のんちゃんへ
いつでも連絡してしてね♡ 楓】


メッセージの後には
携帯番号が書かれていた


楓さんの優しさが嬉しくて
そのメモを胸に当て目を閉じた

泣いているなんて思われたくない
けど、止まらない…
黒崎さんは、何も言わず
ただ黙って運転していた

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