愛は尊い

苦痛




「私はこれから戻りますので、何かあれば勝田に申しつけてください」



では、と
私を部屋へ案内し、早々に
秘書さんは行ってしまった

結局、名前も聞くこともできず…
残された私の後ろには
ニコニコと微笑んでいる
お手伝いの勝田さんがいる



音様、と聞こえた声に
ゆっくり振り返る



「勝田富子です。おぼっ…いえ、嘉賀様のお世話をさせていただいてます。宜しくお願い致します」


おぼっ…?と疑問が浮かんだが
私も慌てて頭を下げた


『本田音です、宜しくお願い致します』


頭をさげると、クスクスと笑われ
音様、と声が聞こえてきた



「本日より、本田…ではなく嘉賀音様ですよ。慣れないかもしれませんが、お気をつけくださいね」


…はい、と返事をした
言われて気がついた

さっき、私は婚姻届にサインをしたのだ
今日から私は本田音ではなく、嘉賀音だ


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