愛は尊い


コン、コン…
コン、コン…

「音様」


何度、ノックされたことか…
何度呼ばれたことか…
それでも私はソファから動けずにいた


泣き腫らした目は腫れぼったくて重い
目を開けるのが辛いくらい
泣きすぎて疲れて寝たせいで
身体のあちこちも痛いし、喉も渇いた


けど、誰にも会いたくない



「食事、置いておきますので」



そんな声が聞こえたが
喉すら通らないから…いらない


もう、いい…と
また瞼を閉じた



どのくらい時間が経ったのか…
何やら話し声が聞こえる
はっきりした声ではないが
勝田さんと…操さん、だろう



二人が話してる、
そう思っていたら
ドン、ドン、と
強めのノックが聞こえた
さすがにその音にびっくりしたが
起き上がる気力なんてない

無視しよう、と決めた私だが
そんな優しい相手ではない

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