愛は尊い



「覚えておりません」



キッチンで昼食の用意をしている勝田さんは考える素振りすら見せず
即答で答えてきた


覚えていないということは
笑った顔を知らないということ?



ですが…と付け加えた勝田さん
幼い頃は無邪気に笑っていた記憶があると教えてくれた


「旦那様は跡継ぎとして大旦那様から厳しく躾を受けていました。大旦那様もわらった顔を見たことはありませんでした」


操さんのお父さん、
勝田さんが言う大旦那様かと思えば
操さんのおじいさんのことだった

操さんは長男ということもあり
跡継ぎとして、おじいさんに厳しくしつけを受けてきたという
そのおじいさんも10年前に他界

それを機に、前社長である操さんのお父さんは操さんに会社を託し
今は海外で余生を楽しんでいる

どうやら、操さんのお父さんは
おじいさんの圧に苦しめられていたようだ


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