愛は尊い
「大旦那様は創業者です。自分が亡くなった後のことを気にしていました。だから旦那様に託したわけです」
託した…か、
そのおじいさんのせいで
操さんは笑わなくなったんだ…
『やっぱり、笑って欲しいですよね』
「…そうですね。いつも難しい顔ばかりで、きちんと休んでおられるのか、それが心配です」
あっ…、
勝田さんの顔が
お母さんの顔と重なった
勝田さんとお母さんは似ていない
けど、
いつだったか、毎日仕事で遅いお父さんを心配していたお母さんの顔
勝田さんの顔を見ていたら
目頭が熱くなってきた
できましたよ、と目の前に出された
トマトソースのナスとキノコのパスタ
皿から手を離そうとした勝田さんの手を
私は咄嗟に握った
音様?と驚いた顔をした勝田さん
『勝田さんにお願いがあります』
わかっていたけど勇気が出なかった
けど、やっぱりこのままじゃダメなんだ