クールな御曹司と愛され政略結婚
ミッション
「なんか今日キレイっすね」
顔を合わせるなり木場くんにそう言われ、持っていたアイスコーヒーを取り落としそうになるほど慌てた。
「え、え?」
「あ、佐鳥さんのことじゃないですよ、フロアです」
なんだ。
言われてみれば確かに、日頃あちこちに散らばっている紙やROM、置きっぱなしの文具なんかも片づけられて、どことなく整然としている。
「自分のことかと思ったんですか、意外とあれですね」
「どうかしてたの、忘れて」
「さてはゆうべいい夜だったんでしょ、灯に愛されてる私アピールですかあ?」
「うるさい!」
ひゅー、と懐かしい冷やかしの声をあげて、両手で私を指さしながら木場くんは席へと戻っていった。
実際のところ、木場くんの揶揄は当たらずとも遠からずだったりする。
今朝、起こさないでくれと言われていた通り、私だけベッドを出ようとしたところ、腰に腕が巻きついてきて、引っ張り戻された。
『いた!』
勢いあまってマットレスに倒れ込み、頭が揺さぶられてくらくらしているところに、灯が覆いかぶさってきて、キスをしたのだ。
ぽかんとしている私を見下ろし、満足そうに微笑むと、灯はそのまま伏せて再び寝てしまった。
私はシャワーを浴びるために、その身体の下から這い出さなきゃならなかった。
私たちの間で、キスというものはいまだに挨拶レベルまで昇華されておらず、日常的な行為ではなかったりする。
今朝のように、前振りも雰囲気もない中で、なんの意味もないキスというのは、初めてだったのだ。
たぶん灯は寝ぼけていた。
後で確かめてみるつもりだけれど、おそらく私にしたことを覚えていない。
でも、ようやく少しパートナーらしくなった気がして、私は浮かれた。
顔を合わせるなり木場くんにそう言われ、持っていたアイスコーヒーを取り落としそうになるほど慌てた。
「え、え?」
「あ、佐鳥さんのことじゃないですよ、フロアです」
なんだ。
言われてみれば確かに、日頃あちこちに散らばっている紙やROM、置きっぱなしの文具なんかも片づけられて、どことなく整然としている。
「自分のことかと思ったんですか、意外とあれですね」
「どうかしてたの、忘れて」
「さてはゆうべいい夜だったんでしょ、灯に愛されてる私アピールですかあ?」
「うるさい!」
ひゅー、と懐かしい冷やかしの声をあげて、両手で私を指さしながら木場くんは席へと戻っていった。
実際のところ、木場くんの揶揄は当たらずとも遠からずだったりする。
今朝、起こさないでくれと言われていた通り、私だけベッドを出ようとしたところ、腰に腕が巻きついてきて、引っ張り戻された。
『いた!』
勢いあまってマットレスに倒れ込み、頭が揺さぶられてくらくらしているところに、灯が覆いかぶさってきて、キスをしたのだ。
ぽかんとしている私を見下ろし、満足そうに微笑むと、灯はそのまま伏せて再び寝てしまった。
私はシャワーを浴びるために、その身体の下から這い出さなきゃならなかった。
私たちの間で、キスというものはいまだに挨拶レベルまで昇華されておらず、日常的な行為ではなかったりする。
今朝のように、前振りも雰囲気もない中で、なんの意味もないキスというのは、初めてだったのだ。
たぶん灯は寝ぼけていた。
後で確かめてみるつもりだけれど、おそらく私にしたことを覚えていない。
でも、ようやく少しパートナーらしくなった気がして、私は浮かれた。