クールな御曹司と愛され政略結婚
「なんだ?」

「式のアルバムじゃないかな」



そういえば、一か月ほどお時間いただきます、とのことだったっけ。

部屋に上がってから包装を解くと、アンティーク調のデザインの、小振りだけれどちょっとした辞書くらいの厚みのあるアルバムが現れる。



「うわ、懐かしい!」

「どれ」



ぱらっとめくっただけで記憶が溢れ、思わず声をあげると、灯ものぞきに来た。

リビングのソファに座ってゆっくり眺めることにする。



「このドレスにしてよかったなあ、なかなか写真映えする花嫁なんじゃない?」

「実物もよかったぜ、けっこう」

「けっこう?」

「そこそこ」

「増えてないんだけど」



あの日言ってくれた、すごくいい、はどこへ行ったんだ。



「あれっ、なんだこれ」

「あはは、盗撮されてる」



灯が友達と煙草を吸っているオフショットだ。

披露宴会場の横に、きれいな喫煙所があるのを見つけて灯が喜んでいたんだけれど、いったいいつ吸いに行く気よ、と思っていたら、どこかで時間を捻出していたらしい。



「タキシードで煙草なんて、緊張感のない新郎」

「緊張を紛らしてたんだろ、かわいいじゃないか」

「冗談でしょ?」

「まるっきり冗談ってわけでもない」



驚いたことに、灯はちょっと傷ついた様子を見せる。

この男も、イベントで緊張するなんてこと、あるんだ。
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