クールな御曹司と愛され政略結婚
「今朝のこと覚えてる?」

「今朝?」

「私が起きようとしたとき」

「俺、今日の記憶は昼から始まってるんだけど」



ふん、やっぱりね。

別にいいけど、と自己完結してアルバムをめくる。



「夢なら見た気がする」

「えっ」



それはもしやと淡い期待をしたけれど、記憶を探るように、しきりに首をひねっているのを見ると、どうやら違うらしい。



「なんか…よくわからないものに襲いかかられる感じの、疲れる夢」

「それ、確実にお姉ちゃんでしょ」

「久々に強烈だったからなあ…」



夢にまで影響を与えるって、よほどだ。

その結果のキスか、あれは。


なんとなくがっかりしていると、灯の手が肩に伸びて、私を抱き寄せた。

顔をのぞき込むようにして、唇を軽く合わせてくる。

思わず「なに?」と驚くと、「理由がいるのか」と心外そうな顔をされた。



「そうじゃないけど…」

「そんな微妙な反応するならもうしない」

「ごめん、だって、珍しいから」

「なにが」

「えーと、灯から、こんな感じにキスしてくれるのとか」



言ったとたん、灯の目つきが冷たくなる。



「お前からされた記憶のほうがないんだけど」

「え!」
< 132 / 191 >

この作品をシェア

pagetop