クールな御曹司と愛され政略結婚
たたかいの後で
玄関の一部を縦に切り取るように上から下まで壁紙を貼り、境界線を細い木の枠で縁どる。
なかなかいい出来栄えなので、姉の突撃を封じるためにも、今度会ったときに見せるべく写真を撮った。
* * *
「ごめんね、待った?」
「いや」
海辺にそびえ立つ、有名な外資のホテル。
夜のベイエリアを見渡せるフレンチレストランで、先に来ていた灯が、窓の外から私に視線を移し、ちょっと驚いたように笑った。
「いいな、それ」
「ほんと? 気に入ってるんだけど、あんまり着る機会ないの」
白い大きな襟とベルトがついた、ネイビーのノースリーブのワンピース。
古典的なデザインで、どこへ着ていっても恥ずかしくないと思って買ったわりに、いまひとつ出番がない。
パーティには地味、仕事には華やかすぎるというすき間のテイストだからか。
「灯もかっこいいね」
「俺も案外着る機会ないんだ、これ」
灯が着ているのは、グレーのスリーピースだ。
「普段からどんどん着たらいいのに」
「うちの会社でネクタイしてる奴なんか、親父以外いないだろ」
「クライアントが女性なら、それ着てったら楽に仕事とれるよ」
白いテーブルクロスに頬杖をついた灯が、女の心理を小バカにするように眉を上げてみせるので「すてきってことだよ」と言い添える。
灯は小さく息をついて、ワインリストを広げた。
「まあ俺も、クライアントのフェロモンによっては、絶対この仕事とってやるって気分にならなくもない」
「えっ、やっぱりそういうことってあるの?」
「冗談に決まってるだろ。やっぱりってなんだ」
なかなかいい出来栄えなので、姉の突撃を封じるためにも、今度会ったときに見せるべく写真を撮った。
* * *
「ごめんね、待った?」
「いや」
海辺にそびえ立つ、有名な外資のホテル。
夜のベイエリアを見渡せるフレンチレストランで、先に来ていた灯が、窓の外から私に視線を移し、ちょっと驚いたように笑った。
「いいな、それ」
「ほんと? 気に入ってるんだけど、あんまり着る機会ないの」
白い大きな襟とベルトがついた、ネイビーのノースリーブのワンピース。
古典的なデザインで、どこへ着ていっても恥ずかしくないと思って買ったわりに、いまひとつ出番がない。
パーティには地味、仕事には華やかすぎるというすき間のテイストだからか。
「灯もかっこいいね」
「俺も案外着る機会ないんだ、これ」
灯が着ているのは、グレーのスリーピースだ。
「普段からどんどん着たらいいのに」
「うちの会社でネクタイしてる奴なんか、親父以外いないだろ」
「クライアントが女性なら、それ着てったら楽に仕事とれるよ」
白いテーブルクロスに頬杖をついた灯が、女の心理を小バカにするように眉を上げてみせるので「すてきってことだよ」と言い添える。
灯は小さく息をついて、ワインリストを広げた。
「まあ俺も、クライアントのフェロモンによっては、絶対この仕事とってやるって気分にならなくもない」
「えっ、やっぱりそういうことってあるの?」
「冗談に決まってるだろ。やっぱりってなんだ」