クールな御曹司と愛され政略結婚
途方に暮れた様子で、額に手を当て、前髪に指を埋める。



「そういうのって、なんて言えばいいんだ?」



困りきった声に、私は溢れる愛しさをどうしたらいいのかわからず、とりあえず抱きついて、頭をごつんとぶつけた。

灯がお返しのように、ぐいと押し返してくれる。

そうだねえ、灯。



「しいて言えば、"愛"じゃない?」



灯はその言葉を受け止めかねるように、一瞬わずかに目をすがめて、でも観念したらしく、赤い顔で、情けなさそうに照れ笑いをして、それから片腕で私を抱き寄せて、熱いキスをたっぷりとくれた。


服を脱がせ合って、ベッドに転げ込んで、ひっきりなしにキスをして、身体のあちこちを探られる。

それこそ、灯の指と唇が触れなかった場所はないんじゃないかというくらい。



「もしかして、成長を確かめられているのは俺のほうか」

「私じゃそんなの、判断できないし、前のときもいっぱいいっぱいで、なにがなんだかわからなかったし」

「そっか」



ほっとしたように言うなり、灯の指が深いところを探り、私は声をあげた。



「そりゃ残念だ」

「ねえっ、手加減してよ」

「無茶言うなよ」



どっちが無茶よ!

カーテンを開け放した窓に広がるベイエリアの夜景も、結局ちっとも楽しむひまなんてなく、お互いの肌に溺れて、揺れて、笑って、鳴いて。

灯の身体に滴る汗が嬉しくて、苦しげなキスが愛しくて。

気がつけば、朝の光が部屋を白く満たしていた。


私を抱きしめて眠っている灯の顎に、首を伸ばしてキスをする。

灯はすぐに目を覚まし、私の身体に乗り上げるようにしてキスを返してきた。



「お風呂入りたい、バルコニーの」

「まさか何時間も入る気か」

「しません、さすがに」



海を向こうに望むウッドデッキの上に、真っ白なバスタブがきらめいている。

これに入らずして、なにがお風呂好きか。

いそいそとバスローブを羽織って準備を始めると、灯が背後で伸びをした。
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