クールな御曹司と愛され政略結婚
「俺も入る」

「無理しなくていいよ?」

「風呂の中って、独特の感覚で、いいぜ」

「なにする気よ!」



ベッドから降りてきて、真っ赤になった私をくすくす笑って後ろから抱きしめる。



「なにか着てよ」

「まだそんなこと言ってんのか、かわいいな」



首筋の、例の場所を噛まれて、入浴剤の入った小さなバスケットを落とした。

脚に力が入らず、灯を道連れにして床にへたり込んでしまう。



「もう、そこ禁止にしようよ…」

「あり得ないだろ」

「じゃあ、灯の弱点も教えてよ」

「そういうのは、自力で見つけるからおもしろいんであって」



全然つけ入る隙を見せないくせに、ずるい…。

そんな心情を見透かしてか、灯は楽しげに、好き放題に噛みつきながら私の身体を仰向けにし、床の上で重なってくる。

ずっとこうしたかったんだなあ、というのが伝わってくるその様子が、かわいく思えてきて、向こうの首に腕を回して、私からもキスをした。



「お風呂入ろうよ」

「もう少し」



もう少しね。

私もそう念じながら、延々キスをする。


大好き、灯。

大好き。


聞こえたはずはないのに、灯がふと顔を離して。



「俺もだ」



そう言って、こっちが照れくさくなるくらい嬉しそうに、にこっと笑った。


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