クールな御曹司と愛され政略結婚
まったく、姉は無敵だ。
いっそ清々しいような気分でそう言うと、灯は恥ずかしそうに顔をしかめて。
「俺なんか、どうせお前にも勝てない」
苦々しく、そう吐き捨てた。
「私の部屋、きれいだったよ」
姉が煙草をくゆらせながら、夜のベランダを歩いてきた。
隣り合った私と姉の部屋は、ベランダでつながっているのだ。
手すりに背中を預け、ふうと夜空に煙を吐く。
「埃ひとつなかった。参っちゃうよな、母親の愛には」
「お姉ちゃんは昔から、大事にされてたもん」
庭から、リーリーと虫の声がする。
「そんなことないよ」
「私なんて、テストの点数も気にされたことないよ?」
「それは、たとえ0点でも、唯子のかわいさに変わりはないからだ」
私の部屋の明かりが、カーテン越しにうっすら姉を照らす。
いつ見ても、目をそらすのが難しいくらい美しい。
「私は常に100点であることを期待されてた。それを利用することもあったけれど、ほんとは唯子みたいに、無条件で愛されてみたかったよ」
にこりと姉が笑む。
いつも感情を読ませない瞳には、ごくかすかに、切ないような、痛みのようなものが浮かんでいて、私は驚いた。
「…一樹先輩、まだお父さんと飲んでるの?」
「盛り上がってるみたいだな、よかったよかった」
「いつ出版社を辞めたの、お姉ちゃん」
「連絡を取らなくなってすぐだ」
いっそ清々しいような気分でそう言うと、灯は恥ずかしそうに顔をしかめて。
「俺なんか、どうせお前にも勝てない」
苦々しく、そう吐き捨てた。
「私の部屋、きれいだったよ」
姉が煙草をくゆらせながら、夜のベランダを歩いてきた。
隣り合った私と姉の部屋は、ベランダでつながっているのだ。
手すりに背中を預け、ふうと夜空に煙を吐く。
「埃ひとつなかった。参っちゃうよな、母親の愛には」
「お姉ちゃんは昔から、大事にされてたもん」
庭から、リーリーと虫の声がする。
「そんなことないよ」
「私なんて、テストの点数も気にされたことないよ?」
「それは、たとえ0点でも、唯子のかわいさに変わりはないからだ」
私の部屋の明かりが、カーテン越しにうっすら姉を照らす。
いつ見ても、目をそらすのが難しいくらい美しい。
「私は常に100点であることを期待されてた。それを利用することもあったけれど、ほんとは唯子みたいに、無条件で愛されてみたかったよ」
にこりと姉が笑む。
いつも感情を読ませない瞳には、ごくかすかに、切ないような、痛みのようなものが浮かんでいて、私は驚いた。
「…一樹先輩、まだお父さんと飲んでるの?」
「盛り上がってるみたいだな、よかったよかった」
「いつ出版社を辞めたの、お姉ちゃん」
「連絡を取らなくなってすぐだ」