クールな御曹司と愛され政略結婚
姉が灰皿に煙草を捨て、パチンとふたを閉めた。
「よし、今のを人生最後の煙草にしよう」
「禁煙するの?」
「子供を作る」
「え!?」
姉が首の後ろに手を入れて、長い髪を払った。
頭を振って気持ちよさそうに、夜空に顔を向けて伸びをする。
「言わずにいてくれてるけど、一樹がそろそろ欲しいみたいなんだ。決心がついた」
「私もそういうの、考えたほうがいいのかなあ…」
「好きにしたらいい、唯子の人生だ」
結婚ですらいまだに実感がないのに、子供なんて、それを上回る実感のなさだよ、と呆然とする私に、姉が安心させるように微笑む。
「運よく私がすぐに授かれば、唯子もプレッシャーを感じなくて済むだろ。あとは灯と話し合って、ふたりでお決め」
ゆったりしたスカートを揺らして、姉が自室のほうへと向かう。
「お姉ちゃん」と声をかけた。
「私、ケーキのいちごとか、好きなものは先に食べちゃうの、昔から」
問い返すような表情で振り返った姉が、首をかしげた。
「そうだったかな」
「…後でまた食べたくなったら、お姉ちゃんが自分のをくれるのを、わかってたから」
姉の目が、居心地悪そうにはにかんで伏せられるのを見た。
「ま、私はたぶん、灯のを奪って自分も食べてたんだよ」
「これからはお姉ちゃん、一樹先輩からもらえるね…」
姉はごくわずかに目を見開いて、それから照れくさそうに、でも自慢げに、全開の笑顔を浮かべて、部屋の中へ消えた。
それはたぶん、姉が私に初めて見せた、混じりけのない感情だった。
「よし、今のを人生最後の煙草にしよう」
「禁煙するの?」
「子供を作る」
「え!?」
姉が首の後ろに手を入れて、長い髪を払った。
頭を振って気持ちよさそうに、夜空に顔を向けて伸びをする。
「言わずにいてくれてるけど、一樹がそろそろ欲しいみたいなんだ。決心がついた」
「私もそういうの、考えたほうがいいのかなあ…」
「好きにしたらいい、唯子の人生だ」
結婚ですらいまだに実感がないのに、子供なんて、それを上回る実感のなさだよ、と呆然とする私に、姉が安心させるように微笑む。
「運よく私がすぐに授かれば、唯子もプレッシャーを感じなくて済むだろ。あとは灯と話し合って、ふたりでお決め」
ゆったりしたスカートを揺らして、姉が自室のほうへと向かう。
「お姉ちゃん」と声をかけた。
「私、ケーキのいちごとか、好きなものは先に食べちゃうの、昔から」
問い返すような表情で振り返った姉が、首をかしげた。
「そうだったかな」
「…後でまた食べたくなったら、お姉ちゃんが自分のをくれるのを、わかってたから」
姉の目が、居心地悪そうにはにかんで伏せられるのを見た。
「ま、私はたぶん、灯のを奪って自分も食べてたんだよ」
「これからはお姉ちゃん、一樹先輩からもらえるね…」
姉はごくわずかに目を見開いて、それから照れくさそうに、でも自慢げに、全開の笑顔を浮かべて、部屋の中へ消えた。
それはたぶん、姉が私に初めて見せた、混じりけのない感情だった。