クールな御曹司と愛され政略結婚
「私もシャワー浴びていい?」

「聞いちゃうところがかわいいよな。俺がダメって言ったら浴びないわけか?」



追い出して戸を閉めた。

ドアの向こうで、まだ笑っているのがわかる。


半分本気なのかもしれないけれど、半分は私をからかっているだけだ。

人の気も知らないで!


スプレーで固められた髪をほぐしながら、服を脱いでバスルームに入った。

濡れた床と湿った空気に、灯の気配が残っている。

どうしよう。

本格的に緊張してきた。





…あれ?



「灯?」



着替えを持ち込んでいなかったため、バスタオルを巻いて出ざるを得ず、こそこそと寝室に戻ると、誰もいなかった。

これさいわいとクローゼットを開けて、下着をつけ、Tシャツをかぶる。


灯はダイニングにいた。

着ないなんてやっぱり冗談だったらしく、下だけ小ぎれいなグレーのスエットを履いて、テーブルでPCを広げている。



「仕事?」

「ん、いや、お祝いのメッセージがけっこう来てて。お前も見てみろ」



灯が見ているのは、主に仕事関係の人とつながっているSNSだった。

隣に座ってのぞき込むと、灯が「これ、もらってる」とコーヒーカップを持った手をちょっと上げる。

そうだった、私も飲もう。



「これ、四次会じゃない? まだ飲んでるんだ」

「ここからカップル発生するかもなあ」
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