クールな御曹司と愛され政略結婚
灯はベッドの端に私を座らせ、自分も隣に腰を下ろした。

私を落ち着かせるように、耳の後ろの髪に指を入れて、優しく掻いてくれる。



「嫌でもダメでもないんだけどね」

「うん?」

「しいて言えば、すごく眠い…」



灯が笑って、おでこに優しく唇で触れる。



「お前は、緊張すると眠くなるって昔から言ってた」

「なんでだろう、脳が疲れちゃうのかな?」

「まあ、目なんかすぐ覚ましてやる」



間近で、自信ありげに笑う。

その顔がゆっくりと寄せられた。



「灯こそ…」

「ん?」



ほんとにこれでよかったの?

そう口からこぼれる前に、凄まじい音量の電子音が静寂を破った。

私も灯も飛び上がらんばかりに驚き、あたりを見回した。



「俺のだ」

「なにその音量!」

「誰かいじったな」



部屋の片隅に置いてある、小さな机の上で、癇癪を起こした子供みたいに、灯の携帯が全力で震えながら鳴いている。

あまりの騒々しさに顔をしかめながら、灯が取り上げた。



「はい、野々原です」



出ちゃったよ。

ということは、相手は仕事関係か。
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