クールな御曹司と愛され政略結婚
当時、私と灯は、それまでの人生で最もと言っていいほど疎遠だった。
お互い忙しかったから当然だ。
ビーコンに入ることになったよ、と連絡しようかとも思ったけれど、唐突すぎる気もして、まあ働きだしてからでいいかな、なんて考えていたら、配置されたのがまさかの灯の下だったのだ。
私はプロデューサーとしての経験がないので、しばらく誰かの下につきたいという話をあらかじめビーコン側にしていた。
一方灯は、一人でも動くことができ、対等な意見の出し合いもでき、かつ自分のサポートも務めてくれる人材が欲しいと会社に要求していたところだったのだ。
「ダブルプロデューサー体制か。例がないわけじゃないけど、よほど相性がよくないと空中分解だろうな」
「報酬だって分散されるしね。でも灯は、自分にはそのやり方が合ってると思ったみたい。問題は誰と組むかで」
「そこに唯子ちゃんが入ったなんて、運命じゃない」
「ただの偶然だって」
私からすれば、奇跡だけれど。
灯にとっても、そうであればいいと願うけれど。
私は灯と完全に対等の立場で働くこともできたけれど、そこに上下をつけてもらうほうを選んだ。
そのほうが私と灯の関係に合う気がしたし、そもそも自分は、灯とでは格が違うとわかっていたからだ。
この体制は、おそらく誰が考えていたよりも、はるかにうまくいっている。
灯が業界に名を馳せはじめたのは、私と組んでからだ。
「名実ともにナイスカップルだね」
「先輩、私の姉を覚えてる?」
記憶を探っているのか、先輩がちょっと口をつぐんでから「もちろん」とうなずいた。
離陸直後の飛行機が、空をぐんぐん上昇していくのが見える。
そろそろLAの灯から連絡が来るころだと考えた。
「佐鳥要子(ようこ)だろ、そりゃ覚えてるよ、あんな強烈な美人」
「ほんとだったら、灯と結婚するのは姉だったんだよ、どう考えたって」
「まあ、順番でいけばね」
車の右前に乗りながら、運転もなにもしないというのは慣れない。
妙に心もとない気分と、特等席のような非日常感を同時に味わった。
お互い忙しかったから当然だ。
ビーコンに入ることになったよ、と連絡しようかとも思ったけれど、唐突すぎる気もして、まあ働きだしてからでいいかな、なんて考えていたら、配置されたのがまさかの灯の下だったのだ。
私はプロデューサーとしての経験がないので、しばらく誰かの下につきたいという話をあらかじめビーコン側にしていた。
一方灯は、一人でも動くことができ、対等な意見の出し合いもでき、かつ自分のサポートも務めてくれる人材が欲しいと会社に要求していたところだったのだ。
「ダブルプロデューサー体制か。例がないわけじゃないけど、よほど相性がよくないと空中分解だろうな」
「報酬だって分散されるしね。でも灯は、自分にはそのやり方が合ってると思ったみたい。問題は誰と組むかで」
「そこに唯子ちゃんが入ったなんて、運命じゃない」
「ただの偶然だって」
私からすれば、奇跡だけれど。
灯にとっても、そうであればいいと願うけれど。
私は灯と完全に対等の立場で働くこともできたけれど、そこに上下をつけてもらうほうを選んだ。
そのほうが私と灯の関係に合う気がしたし、そもそも自分は、灯とでは格が違うとわかっていたからだ。
この体制は、おそらく誰が考えていたよりも、はるかにうまくいっている。
灯が業界に名を馳せはじめたのは、私と組んでからだ。
「名実ともにナイスカップルだね」
「先輩、私の姉を覚えてる?」
記憶を探っているのか、先輩がちょっと口をつぐんでから「もちろん」とうなずいた。
離陸直後の飛行機が、空をぐんぐん上昇していくのが見える。
そろそろLAの灯から連絡が来るころだと考えた。
「佐鳥要子(ようこ)だろ、そりゃ覚えてるよ、あんな強烈な美人」
「ほんとだったら、灯と結婚するのは姉だったんだよ、どう考えたって」
「まあ、順番でいけばね」
車の右前に乗りながら、運転もなにもしないというのは慣れない。
妙に心もとない気分と、特等席のような非日常感を同時に味わった。