クールな御曹司と愛され政略結婚
「ハイライトだけ教えてあげるとね、ヘッドハントされた」

『なんだって!?』

「はい、残りの話は帰ってきてから」

『それでお前、なんて答えた』

「それも残りの話に入ってる」

『怒るぞ』

「ありがとうって言ったよ」



再び灯が黙る。

灯が撮った、さすがのレベルの記録写真を整理しながら、向こうがなにか言うのを待った。



『土曜の朝に東京着くけど』

「知ってるよ、私がフライト手配したんだから」

『空港まで迎えに来い』

「はっ?」



声が裏返るほど驚いた。

いつもそんなこと言わないじゃない、いきなりなに。



『俺の車使っていいから』

「ちょっと待ってよ、なに、怒ったの?」

『一刻も早く話を聞く必要があると感じただけだ』

「行かないよ、ゼロには。まだビーコンでやることあるってちゃんと言った」



慌てて説明すると、電話の向こうで不穏な沈黙が下りる。



『別に、お前が行きたいなら止めない』

「気持ちよく送り出すって声にはまったく聞こえないけど」



灯がしばらくためらうような間を置いてから『悪い』とつぶやく。



「どうしたのよ」

『焦った』

「焦っ…?」
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