クールな御曹司と愛され政略結婚
行き止まり
灯の車は、一樹先輩とはまた別のドイツメーカーのSUVだ。
大きいぶん視界は高く、案外私でも運転しやすい。
が、そもそも私は、運転自体が得意ではない。
「俺より疲れてるな」
「やっぱり大きかった…」
空港の到着ロビーで一週間ぶりに会った灯は、同情の目つきで私を見た。
よく考えたら、この車で知らない道を長距離走ったことはなかったのだ。
撮影現場に灯が持ち込んだ車を代わりに移動させるとか、近場まで買い出しに行くとか、走らせたのといえばその程度で。
灯からスーツケースを預かって駐車場に向かう。
「向こうの空港、工事終わってた?」
「いや、むしろ出国ゲート前が迷路状態になってた」
半歩ほど後ろを灯がついてきている。
それが自分でも驚くほど心強く感じられて、あれ、私もしかしてさみしかったのか、と今ごろ気がついた。
慣れない家でひとりきり、部屋数も空間も持て余した一週間。
スーツケースをラゲッジに積んで、運転席側に回ったら、灯がそこにいた。
「え、なに?」
「運転代わってやるよ」
「いいよ、くたびれてるでしょ」
「機内で寝たし、今のお前よりましだ」
隣の車との狭いスペースで、細く開けたドアの主導権を取り合う。
黒いTシャツにジーンズという格好の灯は、こういう車高の高い車のそばにいると、長身が際立つ。
私も160あるから、小さくはないのだけれど。
「焼けたね」
「ん、そりゃな」
私が指した前腕を、灯が見下ろした隙に、彼を押しのけて運転席に座った。
「おい」
「ゆっくり寝てよ、旦那さま」
大きいぶん視界は高く、案外私でも運転しやすい。
が、そもそも私は、運転自体が得意ではない。
「俺より疲れてるな」
「やっぱり大きかった…」
空港の到着ロビーで一週間ぶりに会った灯は、同情の目つきで私を見た。
よく考えたら、この車で知らない道を長距離走ったことはなかったのだ。
撮影現場に灯が持ち込んだ車を代わりに移動させるとか、近場まで買い出しに行くとか、走らせたのといえばその程度で。
灯からスーツケースを預かって駐車場に向かう。
「向こうの空港、工事終わってた?」
「いや、むしろ出国ゲート前が迷路状態になってた」
半歩ほど後ろを灯がついてきている。
それが自分でも驚くほど心強く感じられて、あれ、私もしかしてさみしかったのか、と今ごろ気がついた。
慣れない家でひとりきり、部屋数も空間も持て余した一週間。
スーツケースをラゲッジに積んで、運転席側に回ったら、灯がそこにいた。
「え、なに?」
「運転代わってやるよ」
「いいよ、くたびれてるでしょ」
「機内で寝たし、今のお前よりましだ」
隣の車との狭いスペースで、細く開けたドアの主導権を取り合う。
黒いTシャツにジーンズという格好の灯は、こういう車高の高い車のそばにいると、長身が際立つ。
私も160あるから、小さくはないのだけれど。
「焼けたね」
「ん、そりゃな」
私が指した前腕を、灯が見下ろした隙に、彼を押しのけて運転席に座った。
「おい」
「ゆっくり寝てよ、旦那さま」