クールな御曹司と愛され政略結婚
ケチャップのボトルを振りながら聞くと、身体を起こした灯が眉をひそめた。
「…なにに?」
「オムライス」
「書くって?」
「え?」
自分の分にケチャップで"YUI"と書いているのを、灯がわざわざのぞきに来て、あぜんとした様子で見守る。
「まさか、俺のにも書く気か」
そこで私はようやく、灯がなにを言っているのか理解した。
あれっ、もしかして、これってみんなやらないの?
「あの、うちだと全員、好きな言葉書くんだけど」
「たとえば?」
「お父さんなら"バーディ"とか、テスト前なら"100点"とか…」
灯が笑いをこらえているのを見て、急に恥ずかしくなった。
嘘、一般的な文化だとばかり思っていたのに。
「え、子供っぽい? やだ?」
「いや、書いてくれていいけど。悪いが言葉は思いつかない」
「じゃあ"灯"って書くよ」
「漢字かよ」
「ローマ字だと字数多くて、味濃すぎちゃうかもしれないから…」
なんでそんなに笑うの?
肩を震わせている灯の横で、真っ赤な顔を自覚しつつ丁寧に"灯"と書いた。
私、この字が好きなのだ。
ビーコンの社名のもとにもなっている名前。
「佐鳥家って平和だな」
「今気づいたんだけど、たぶんそれぞれが好き嫌い多いから、取り違えないようにっていうお母さんの工夫だと思う」
「唯、そんなに好き嫌いあるか?」
「私はないんだけど…」
「…なにに?」
「オムライス」
「書くって?」
「え?」
自分の分にケチャップで"YUI"と書いているのを、灯がわざわざのぞきに来て、あぜんとした様子で見守る。
「まさか、俺のにも書く気か」
そこで私はようやく、灯がなにを言っているのか理解した。
あれっ、もしかして、これってみんなやらないの?
「あの、うちだと全員、好きな言葉書くんだけど」
「たとえば?」
「お父さんなら"バーディ"とか、テスト前なら"100点"とか…」
灯が笑いをこらえているのを見て、急に恥ずかしくなった。
嘘、一般的な文化だとばかり思っていたのに。
「え、子供っぽい? やだ?」
「いや、書いてくれていいけど。悪いが言葉は思いつかない」
「じゃあ"灯"って書くよ」
「漢字かよ」
「ローマ字だと字数多くて、味濃すぎちゃうかもしれないから…」
なんでそんなに笑うの?
肩を震わせている灯の横で、真っ赤な顔を自覚しつつ丁寧に"灯"と書いた。
私、この字が好きなのだ。
ビーコンの社名のもとにもなっている名前。
「佐鳥家って平和だな」
「今気づいたんだけど、たぶんそれぞれが好き嫌い多いから、取り違えないようにっていうお母さんの工夫だと思う」
「唯、そんなに好き嫌いあるか?」
「私はないんだけど…」