クールな御曹司と愛され政略結婚
向かい合ったふたりは、食えない笑みを浮かべ合った。
そうじゃないかなと想像していたとはいえ、その事実は驚きだった。
クリエイターとしての稼ぎで暮らしているわけじゃない人たちの中にも、センスや技術を持った人がいることくらいは知っている。
けれどそういう人たちとプロとの決定的な差は、意識だ。
自分の作りたいものを作れるとは限らない、商業作品としての割り切り。
納期の厳守、望まない修正や改編を受け入れる姿勢。
そういうものは、プロですら完璧に備わっている人は少ない。
『だからディレクターの腕が大事なんだよ』
『素人クリエイターのマネジメントでもさせてるのか』
『それに近いよ。俺たちは世界中に非プロのクリエイターを抱えてる。ディレクターはネットワークで彼らと緊密に結ばれていて、動きのいいのを常にチェックしてる』
『うまくいくものなのか、そんなんで』
『うちのリールは見ただろ?』
黙るほかなかった。
いっているから、あのクオリティなのだ。
『それからプロデューサーも大事だね。やっぱりプロじゃなきゃいけない領域もある。案件によっても、アマチュアに任せられる仕事の割合は変わる。そこの見極めはプロデューサーの責任』
一樹先輩が、私をじっと見て意味ありげに微笑む。
『欲しいんだよなあ、優秀な人』
『こいつ、大事なときに寝るけど、それでもいいか?』
私は灯の脚を、思いきり蹴った。
「唯ちゃん、夕食うちで食べてくでしょ、なにがいい?」
「天ぷら!」
トレイに飲み物を載せて、灯のお母さんがリビングに顔を出した。
おばさんの天ぷらは、透けるようなさくさくの衣で、料理屋顔負けのおいしさなのだ。
「私、手伝うから、やり方教えて」
「あらまあ、嬉しい。少しずつうちの味、覚えていってね」
「勉強させていただきます、お義母さま」
「うちの子に妙なもの食べさせられちゃかないませんからね」
そうじゃないかなと想像していたとはいえ、その事実は驚きだった。
クリエイターとしての稼ぎで暮らしているわけじゃない人たちの中にも、センスや技術を持った人がいることくらいは知っている。
けれどそういう人たちとプロとの決定的な差は、意識だ。
自分の作りたいものを作れるとは限らない、商業作品としての割り切り。
納期の厳守、望まない修正や改編を受け入れる姿勢。
そういうものは、プロですら完璧に備わっている人は少ない。
『だからディレクターの腕が大事なんだよ』
『素人クリエイターのマネジメントでもさせてるのか』
『それに近いよ。俺たちは世界中に非プロのクリエイターを抱えてる。ディレクターはネットワークで彼らと緊密に結ばれていて、動きのいいのを常にチェックしてる』
『うまくいくものなのか、そんなんで』
『うちのリールは見ただろ?』
黙るほかなかった。
いっているから、あのクオリティなのだ。
『それからプロデューサーも大事だね。やっぱりプロじゃなきゃいけない領域もある。案件によっても、アマチュアに任せられる仕事の割合は変わる。そこの見極めはプロデューサーの責任』
一樹先輩が、私をじっと見て意味ありげに微笑む。
『欲しいんだよなあ、優秀な人』
『こいつ、大事なときに寝るけど、それでもいいか?』
私は灯の脚を、思いきり蹴った。
「唯ちゃん、夕食うちで食べてくでしょ、なにがいい?」
「天ぷら!」
トレイに飲み物を載せて、灯のお母さんがリビングに顔を出した。
おばさんの天ぷらは、透けるようなさくさくの衣で、料理屋顔負けのおいしさなのだ。
「私、手伝うから、やり方教えて」
「あらまあ、嬉しい。少しずつうちの味、覚えていってね」
「勉強させていただきます、お義母さま」
「うちの子に妙なもの食べさせられちゃかないませんからね」