【短編集】その玉手箱は食べれません
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薄暗い空間から二本の腕が突然現れた。同一人物のものと思われる左右の腕。
「どぉ~ちだ」
突き出された両手はジャンケンでいうグーの形に握られている。
「なんのつもりだ?」
おれがぶっきらぼうに訊き返すと拳が左頬に飛んできた。口の中に錆臭さが広がり、床にペッと血を吐き出す。
「口の聞き方に気をつけてよ。せっかくプレゼントをあげようと思ってるのに……さぁ~どっちか早く選んで」
おれを殴った相手は再び両手を出し、たまらなく楽しそうに声を弾ませる。