【短編集】その玉手箱は食べれません
「西洋では新郎が右手にサーベルを持って左手で新婦を他の男から守るのが決まりなのよ。だから通常なら新郎の立ち位置は新婦の右側なの。あなたは私を左手で守りたくないんでしょ?」
元カノはおれの右側に立っていた。
「立ち位置を逆にしたからって結婚できるか!」
おれは椅子から転げ落ちるようにして必死に逃げた。
『つばきの間』から出て白を基調としたモダンな廊下を疾走。
おれの足音だけがトットットッと館内に響き、中庭が見渡せる回廊、エントランス、ロビーなどに従業員の姿がなく閑散としていた。
とても不気味な感じがした。