【短編集】その玉手箱は食べれません
披露宴会場から出ると、さらなる異変に気がつく。
真っ昼間なのに誰も外を歩いておらず、車も走っていない。 披露宴会場の外は大通りに面しているのに静けさが支配していた。
「びっくりしたでしょ」
うしろから元カノの声がした。
おれは振り返らず、黙って元カノの話を聞く。
「あなたと私が地下室で暮らしている間に冷たい風が吹いたの。世界中の人達が同時刻にその風を感じたわ。そこに空気感染する恐ろしいウィルスが紛れていて、鳥インフルエンザが突然変異したものらしいんだけど、感染スピードが速くてワクチンは間に合わず、大勢が死んだのよ」
「う、嘘だ……」