【短編集】その玉手箱は食べれません


「早くとりかかろう」

 車のトランクから剣先スコップを3本出して校舎に近づく。


「かわらないなぁ~」

 赤茶色の瓦屋根、平屋の木造の校舎を見てトモヤが懐かしそうに言葉をもらす。


「あそこだ」

 トモヤが校舎の北側を指差した。

 斜めに傾き錆びた鉄棒、黄色、青、赤などに塗られたタイヤが半分埋められた『タイヤとび』といわれる粗末な遊具が見え、子供が遊びに来るのを諦めてしまったかのようにひっそりとしている。


「警備の人に見られたらどうするの?」

 ノリ子が心配そうにトモヤに尋ねる。

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