【短編集】その玉手箱は食べれません
「えっ、えっ?」
ウエイトレスは動揺して回転椅子から落ちそうになる。
「もう時効だから警察に話していいよ。でも私も十分に罰を受けている。彼がずっとあそこに座って商売の嫌がらせをしているからね。それでも幽霊を見たいという物好きな客が来てくれて商売はなんとか続けられているんだけどね」
ウエイトレスが窓際の席に視線を向けると、座っているマスターの幼馴染みが目を湾曲させてニタッと笑った。
顔は幼い子供だった。
「君も今日でここを辞めちゃうのかな?」
マスターは平然とタバコの煙を吐き出しながら、引きつった顔のウエイトレスに尋ねた。
<了>
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