【短編集】その玉手箱は食べれません


「あなたが10年前に娘の死体を発見して、警察ではなく私に連絡してくれたおかげです」

 白髪の男の目は心なしか潤んでいた。


「犯人がここの学校の関係者なら埋めた場所に必ず戻ってくると思っていましたから」


「ええ」


「タイムカプセルの中にあった未来の自分自身に宛てた手紙を見つけたときはすぐに犯人の目星はつきましたが……あなたの娘さんを殺したという証拠にならないと思っていました。けれど結局は手紙を書いた全員が関わっていたようです。あのとき私がとめていなければあなたは長い年月苦しまずにすんだのに……」


「あのときは取り乱してしまいました。あなたがとめてくれなかったら今頃私は刑務所の中です」

 白髪の男は再度頭を下げた。

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