【短編集】その玉手箱は食べれません


 そこから水が一滴、二滴、三滴としずくをたらしている。


 手を伸ばせば微妙に届かない距離。


 おれは舌打ちしながら土足で上がり、蛇口をきつく閉めてから部屋を出た。


 外は雨が降っていなかった。


 アスファルトはしっとりと濡れ、所々に水たまりもできている。


 新聞配達しているときだけ雨に祟られたのだろうか?


 いつも通勤に使っている路線バスに乗ると、意外にも混雑していなかった。

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