【短編集】その玉手箱は食べれません


 乗降口より前には左右に座席が1列しかないのに、いくらか空きがあった。


 次ぎの停留所でバスに乗ったのは女子高生一人だけで、すぐに降りらなければいけないのか、座らずにおれの座席の背凭れに付いている吊り革に掴まる。


 赤信号でバスが停まると、その女子高生は吊り革から手を離して左手で携帯をいじり、右手でペットボトルのミネラルウォーターを口に運ぶ。


 青信号になってバスが発進すると、両足だけで踏ん張っていた女子高生の体が大きく揺れた。

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