【短編集】その玉手箱は食べれません


「あっ、ごめんなさい」

 ペッドボトルの水がおれのスーツの肩口にかかる。


 女子高生がカワイイ顔をしていたこともあり、おれは作り笑いをして許してあげた。


 会社まで300メートル手前の停留所で降りる。


 その道すがら水たまりを車が撥ねて、おれの顔に泥をかけた。


「おい!」

 大声で叫んでも車が止まるとは思わなかったが、そうでもしなければ怒りがおさまらない。

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