【短編集】その玉手箱は食べれません


 必死に前肢を動かしてもがき、首を伸ばして呼吸を試みるがなにかに引っ張られるように飲み込まれてしまった。


 あっという間の出来事だった。


 呆然として助けることを忘れてしまっていたぼくは慌てて水たまりの中へ手を入れるが猫どころかなんの感触も掴めなかった。


 深さを確かめるために小石を水たまりへ投げると跳ね返る。


 えっ?!


 さっき腕の関節くらいまで入ったのにおかしいな?


 底なし沼のように重さが関係しているのかなと思い、ボーリングの球くらいの大きさで表面が凸凹の石を両手で抱え、水たまりに近づいてゴロンと転がした。 
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