【短編集】その玉手箱は食べれません
エレベーターは自動的に階上へ動き始めたが、おれの役職が上へ上がることはないなと昇進を諦め落胆した。
顔なじみの同じフロアで働く連中は、おれの不幸を笑って受け流してくれたのが唯一の救いだった。
しかし、不幸はさらに続いた。
精神的にグッタリ疲れ、狭くても世界で一番くつろげる我が部屋に帰ると、ベッドに吸い付くように眠った。
ボン……ボン……ボン……。
蛇口が間隔を空けて水滴を落とす嫌がらせで目が覚めた。