【短編集】その玉手箱は食べれません


 エレベーターは自動的に階上へ動き始めたが、おれの役職が上へ上がることはないなと昇進を諦め落胆した。


 顔なじみの同じフロアで働く連中は、おれの不幸を笑って受け流してくれたのが唯一の救いだった。


 しかし、不幸はさらに続いた。


 精神的にグッタリ疲れ、狭くても世界で一番くつろげる我が部屋に帰ると、ベッドに吸い付くように眠った。


 ボン……ボン……ボン……。


 蛇口が間隔を空けて水滴を落とす嫌がらせで目が覚めた。

< 181 / 197 >

この作品をシェア

pagetop