【短編集】その玉手箱は食べれません
時間は午前2時37分。
両手でぎっちり蛇口のハンドルを閉め、ベッドに戻ってもまた水が落ちた。
じっと蛇口を見詰めていると、水は落ちてこなかった。
だが、ベッドで浅い眠りに入ると静寂を突き破り、水滴が台所のシンクを叩く。
まるで姿の見えない誰かに悪戯されているような気がして、薄気味悪さを感じた。
最後の手段として耳にテッシュを詰め、さらにヘッドホンをかけて深い眠りを手に入れた。