【短編集】その玉手箱は食べれません


 目が開いた。


 カーテンに射し込んでいる陽の高さから、目覚し時計のアラーム音を聞き逃し、寝坊したのは確実だと思いながら重い体を起す。


 視力が弱いわけでもないのに、視界は白くぼやけている気がした。


 いつものように朝刊を取りにいこうとすると、膝から下に負荷がかかり、上半身と下半身の歩くバランスが崩れる。


 なんだ?


 ジャブ……ジャブ……。


 また水だ……水の抵抗を受けている。

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