【短編集】その玉手箱は食べれません
秩序のない間隔で、頬に冷たいものが当たる。
覚醒する切っ掛けを作ってくれたが、目を開けるのが怖かった。
瞼の裏側から見える景色はぼんやりと赤く、焼けるような陽射しを受けているのが伝わる。
手で上空を遮りながら、静かに瞼を上に動かす。
頭上の太陽がやけに近く感じる。
露出していた手のひらは真っ赤、首筋は熱を帯びてジリジリと焼けている。
下半身は水に浸かり、上半身は魚を冷凍保存するときに使うような白い発砲スチロールの箱にもたれていた。