【短編集】その玉手箱は食べれません
古いタイプの黒いウェトスーツを着ているから、熱を吸収して日射病寸前だ。
すべてを思い出した。
おれは南国の島でダイビングを体験しようと、ホテルで紹介してもらったツアーに飛び込みで申し込み、見ず知らずの外国人観光客数人とクルーザーに乗って海中を散歩した。
美しいサンゴ礁に見惚れている間に、時間を忘れ、海上に顔を出すとクルーザーの姿はなく、大海原にひとりぼっち。
おれは夢を見ていたらしい。