【短編集】その玉手箱は食べれません
周りを見ればサメの背びれがウヨウヨ動いていた。
海に浸かっている足にザラッとしたサメの皮膚が触れる。
足首から血が出て、海面に赤い液体が広がった。
血のニオイを嗅ぎつけた背びれの集団が、徐々におれとの距離を詰めてくる。
絶望感の中で、心がどんどん劣化していくのがわかった。
チャポンという海面を弾く音のあと、足を咬まれたおれの体は海中深く沈んでいった。
<了>
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