【短編集】その玉手箱は食べれません


「いままで置いてなかったほうがおかしいよ」

「そうかな」

「そうだよ」

「バケツないほうが学校の怪談として雰囲気でるのに」

「学校の怪談ってなに?」と僕は上の空で尋ねる。

「知ってるくせに。だからこの水たまりに興味を示してたくせに」
佐竹君が目を細くして卑しく笑う。

「知らないなぁ~」

「よく見るとバケツに水が一杯入ってるね。誰が用意したのかな?」

「知らないなぁ~」

「雨漏りの水をためるために置いたんじゃないようだね」

「掃除でもするつもりで置きっぱなしなだけでしょ」

「事件現場を荒らすのはよくないと思う」

「事件がどうかなんてわからないさ」

「五分前には置いてなかった」

「そうなんだ。だったら置いたのは僕かもしれないね」
関心なさそうに僕は応える。

< 191 / 197 >

この作品をシェア

pagetop