【短編集】その玉手箱は食べれません
「親戚が隣町の小学校にいるんだけど、数年前にその学校の裏庭にできた水たまりで溺れて死んだ生徒がいて、いまでも幽霊として現れることがあるんだって」
佐竹君は持っていたサッカーボールを床に置く。
「廊下で蹴ったら校則違反だよ」
「自分は校則違反以上のことをしてるくせに」
「覚えてないなぁ~」
「この学校に来て同じこと繰り返すつもり?」
佐竹君はやや語気を強めて尋ねてくる。
「うっかり屋さんなんで、何を繰り返すのか思い出せないよ」
「そのバケツに顔を突っ込めば何か思い出すんじゃない?」
「押すなよ!絶対押すなよ!」
僕はバケツに近づき、お笑い芸人のお約束みたいな言い方であおる。
「それは押せってことだね」
佐竹君がサッカーボールを蹴って俺の背中に当てた。