【短編集】その玉手箱は食べれません
「おい、なにやってんだ?」
尋ね方は粗暴であきらかに退屈している。
「な、なにも……」
ぼくが戸惑って答えると、後藤がニヤついた表情で近づいてくる。
「なにしてんだよ?」
繰り返し聞かれてもぼくは首を横に振るだけしかできない。
水たまりのことを話したら実験材料として落とされることは目に見えている。
黙っていることが気に食わなかったのか、後藤はぼくを軽く突き飛ばした。